犬や猫と暮らすうえで、寄生虫の問題はなかなか重大なものです。寄生虫の中には犬の健康状態はもちろん、飼い主である人間にも害を及ぼす場合もあるので放っておけません。
寄生虫対策で大事になってくるのは、寄生虫そのものへの知識です。ここでは、あらゆる外部寄生虫について紹介します。
ノミ
ノミは世界中どこにもでもいて、犬猫以外にも人間にも寄生するもっとも一般的な外部寄生虫です。
日本では主にネコノミというノミが犬や猫の身体に寄生します。体長は1~3mm、褐色で縦に平たい体と、六本の足を持っています。
幼虫の頃は成虫の糞や人間やペットの食べこぼし、フケなどを食べて成長し、成虫になると性別関係なく吸血をはじめます。
光の刺激や動物の身体から発する熱や二酸化炭素などを感知すると、強靭な後ろ足で体長の約60倍の距離、約100倍の高さをジャンプし、身体に寄生します。
マダニ
マダニはほかのダニに比べて非常に体が大きく、吸血する前でも2~3mm程度の大きさのため、肉眼ではっきりと見ることが出来ます。吸血後はそこからさらに200倍ほど膨れ、その全長が1cm以上にまで大きくなります。
麻痺性の毒を持つマダニもいて、刺された動物には、後肢が動かなくなる、立てなくなるなどの神経症状が出ることがあります。
宿主に寄生するとノコギリのような歯を皮膚の奥にしっかりと食い込ませて、唾液をセメントのように固め、しっかり固定し、1週間以上の時間をかけてゆっくりと血を吸います。
膨らむと目立つのですぐに見つけることができますが、無理に引きはがすと体がちぎれ、皮膚に食い込んだ頭が残ってしまう可能性があるのでご注意ください。また、メスであるとお腹に大量の卵を持っていることがあるため、潰すのもNGです。
ツメダニ
ツメダニはツメダニ皮膚炎の原因となる寄生虫です。体の前方に大きく鋭い爪を持っているため、ツメダニと呼ばれています。
動きが俊敏で、前後にも素早く動きます。名前の由来ともなっている爪で宿主の皮膚を傷つけ、体液やリンパ液を摂取して生きています。
体長は0.3~0.5mmほどです。
犬がツメダニに感染すると、フケやただれ、かゆみ、かさぶたといった症状が出てきます。人にも感染するそうですが、人間の体表では繁殖できないため症状はあまりひどくなりません。
ヒゼンダニ
疥癬(かいせん)という皮膚病を引き起こすダニです。
感染するととにかく痒く、爪で何度も引っ掻いて傷ができてしまいます。
かさぶたができ、フケもでてきます。メスは0.4mm、オスはその約3分の2程の体長です。
角層に横穴を掘りトンネルを作り、そこで一か月間卵を産み続けます。これがフケの原因のようです。犬などの動物たちと共に人間にも感染し、皮膚病を引き起こすので注意が必要です。
耳ヒゼンダニ
耳ヒゼンダニは耳疥癬(かいせん)を引き起こすダニです。
もしも犬が耳を激しくかゆがっていたり、黒い耳垢がたまっていたり、悪臭がしていたら、耳ヒゼンダニに感染している可能性が高いです。耳ヒゼンダニは体長0.3~0.4mmで、耳の中に寄生して耳道内の上皮や体液、耳垢を食べて生き、耳の中で卵を産むので、どんどん繁殖してしまいます。
重度感染になると、耳の周囲や首にまで感染が広がってしまいます。
また、まれに人にも寄生するそうです。
ニキビダニ
ニキビダニはアカラス症(毛包虫症)という皮膚病の原因となるダニです。
毛包に常在していますが、このダニがいるからといって必ずしも発症するわけではありません。免疫力や抵抗力の低下などが原因で異常繁殖するとされています。
子犬に見られることが多く、半年ほどで自然治癒する確率が50パーセントといわれています。
成犬での発症は例が少なく、生涯の治療が必要となります。症状は、脱毛と皮膚の赤み、フケが口や目の周りからどんどん広がるといったものです。
また、人間には人間のニキビダニがいるので、人と犬の間で伝染することはありません。
シラミ
シラミは数mm以下の体長で、弾力性のある丈夫な体をしていて、1か月で100個以上の卵を産むと言われています。しかし、動物の体上でしか生きて行けず、地上に落ちると数日で死んでしまうそうです。
ハジラミシラミと特徴が似ていますが、フケや分泌物を摂取して生きるハジラミシラミと違い、シラミは吸血することで生きていきます。
宿主特性が強く、人に害を及ぼすことはあまりありません。
ツツガムシ
ツツガムシはリケッチア症と呼ばれる感染症を引き起こします。
野ネズミなどに寄生するダニの一群で、日本には120種類以上のツツガムシが生息しているそうです。そのうち、リケッチアと呼ばれる病原体を持ち、人に吸着する性質を持っているものが3種類存在します。
リケッチアは生きた細胞の中に寄生する非常に小さな細菌で、感染すると高熱、発疹、頭痛、倦怠感、リンパ節が腫れるなどといった症状が現れます。
刺されたからといって必ず発症するわけではありませんが、放置すれば重症化したり、死に至る危険もあります。
寄生虫の知識を身につけておこう
知識というものは決して邪魔にはなりません。愛犬との共生をより良いものにするために、外部寄生虫の知識と関心は常に持っておきましょう。