気をつけたい犬の病気のひとつが「椎間板ヘルニア」です。
この病気にかかってしまうと、犬は強い痛みのために歩けなくなったり、まひ症状を示す場合も。
犬にとって苦しい病気であるだけでなく、そんな我が子の姿を見るのは飼い主にとってもつらいもの。
椎間板ヘルニアについて勉強して、予防に役立てましょう。

椎間板ヘルニアってどんな病気?なりやすい犬種は?

背骨と背骨の間に挟まっている、クッションのような役割をする部位を「椎間板」と言います。
椎間板の中心にはゼリーのように柔らかい物質「髄核」があり、その周囲を繊維質が囲んでいます。
このクッションが変形してしまい、飛び出した髄核が周囲の神経や脊髄を圧迫する病状が椎間板ヘルニアです。

椎間板は首から腰にかけての全ての背骨の間に挟まっているため、椎間板ヘルニアの発生部位も広範囲にわたります。
しかし、犬の場合は、背中から腰にかけて発症するパターンが大部分を占めています。その中でも特に第11胸椎から第3腰椎にかけてヘルニアが起こる割合が高くなっています。

主な症状は「運動を嫌がる」「歩き方がおかしい」「体の各部位の痛みや麻痺」などです。痛み、あるいは麻痺が生じる部位は、ヘルニアがどの部位に発生したかによって若干の変動があります。

また、痛みや麻痺の範囲についても、髄核が周辺組織のどこを刺激するかによって変わります。
症状のあらわれ方はこのようにさまざまですが、重症の度合いをまとめれば「痛み→痛みと軽度の運動困難→反射の消失と中度の運動障害→完全に動かないが痛覚はある→完全に動かず痛覚もない」という順番で高くなると言えます。

椎間板ヘルニアの原因については、肥満、老化、交通事故や高いところからの落下などの外傷が考えられます。
注意したいのは、椎間板ヘルニアにはかかりやすい犬種が存在することです。
例えばミニチュアダックスフントのように胴長の犬種は体の構造上腰に負担がかかりやすいため椎間板ヘルニアを生じやすい傾向にあります。

椎間板ヘルニアは2タイプに分かれる

犬種と椎間板ヘルニアの関係については、まだ知っておいてほしいことがあります。
実は、椎間板ヘルニアは二つの種類に分かれているんです。
椎間板の繊維輪が裂け、髄核が完全にはみ出してしまい、脊髄を圧迫するケースがハンセンⅠ型です
髄核は内部にとどまっているものの、線維輪自体が変形してしまい脊髄を圧迫するケースをハンセンⅡ型と言います

小型や短足になるよう繁殖されてきた犬は、生まれつき軟骨の形成に遺伝的変異を抱えています。
さきほど例に挙げたダックスフントも、正確には「胴が長い」のではなく軟骨の形成不全のために「四肢が短い」ので、結果的に胴長に見えるのです。
これらの小型犬の線維輪は生まれつき脆いため、Ⅰ型ヘルニアが生じる確率が高まります。
2~7歳のまだ若い段階で突発的に発症することも特徴です。
ハンセンⅡ型はこれに対して、主に老化による線維輪の疲労によって起こります。
つまり、体重の重い大型犬種の成犬~老犬期に発生する場合が多く、症状の進行の遅いことが特徴です。

椎間板ヘルニアの治療方法

椎間板ヘルニアに対する治療方法は、「内科的治療」と「外科的治療」そして「対処療法」があります。
症状が軽度の場合は鎮痛剤や消炎剤などの投薬によって内科的治療を試みます。

症状がより重症であれば、外科手術によって原因となっている椎間板を取り出し、リハビリで運動能力の回復を目指します。
手術が適応できないほど症状が進行している場合には、車いすによる歩行の補助や排泄の補助などの治療を行います。
これらが対処療法にあたります。

椎間板ヘルニアは早期発見が大事

ヘルニアの初期段階であれば、内科的治療でも外科的治療でも90%の犬が軽快したという報告があります。
そう、椎間板ヘルニアで重要なのは病気の予防と早期発見です。

「歩く時腰が左右に揺れている」「一人遊びをしている時に高い声で鳴いた」「寒いわけでもないのに体が震えている」「たまたまかな」で片づけてしまいがちなこうした些細な出来事が、椎間板ヘルニアの初期症状だったという場合もあります。

愛犬のサインに気が付いてあげられるのは飼い主さんだけです。
日ごろから飼い犬の様子に注意することで、病気を未然に防いであげたいですね。