断耳断尾

ドーベルマンやシュナウザー、プードルやコーギーといった犬種は、耳が短い、尻尾が短いといったイメージを持たれている方も多くいらっしゃると思います。
しかし、彼らは本来、生まれてきたときには耳も尻尾も長いのだという事をご存知でしょうか。では、どうして世の中のドーベルマンなどは短い耳や尻尾を持っているのでしょうか。
それは、断耳や断尾の手術をされているからです。

断耳や断尾って何?

断耳や断尾とは、耳や尾を人の手で切ってしまうことをいいます。
その歴史は古く、かつて牧羊犬や狩猟犬として活躍していた犬たちが、怪我をしない、キツネなどの獲物に間違われない、長い尾を踏まれてしまわないように、などと言った理由をもとに断耳・断尾されていたそうです。つまり、当時の犬たちの為にしていたのです。

しかし、現在では、昔の名残を残してスタンダードに合わせる、外見をよくする、犬種のイメージを固めるといった理由で、子犬のうちに外科手術によって断耳・断尾することが多くなりました。
犬種によっては、切られる長さは異なり、根元からざっくりと切られてしまう場合や、先端だけ切断されてしまう場合があります。

ペットショップで売られる子犬たちの耳や尻尾が長くないのは、すでに外科手術を終えているためです。しかし近年では、この外科手術を行わずに販売する例もあるようです。

断耳や断尾による問題とは

何故、断耳・断尾されない子犬たちが売られるようになったのでしょうか。
それは、外科手術によって考えられるデメリットやリスクなどが問題視されるようになってきたからです。

断耳や断尾には、麻酔の副作用、完治するまでの痛み、傷口からの感染、傷口が痕になってしまう瘢痕化(はんこんか)、トラウマやストレスになってしまうなどの問題があり、時には手術が原因で死亡してしまう可能性もあります。
また、獣医師の腕によっては左右のバランスが悪くなってしまうというトラブルもあるようです。

術後も、断耳によって通常の耳を持つ犬に比べて耳を動かす機能が落ち、その結果、聞こえが悪くなってしまったり、断尾によって気持ちが表現しにくくなった結果、人や犬同士でのコミュニケーションがとりづらくなったり、バランス感覚が悪くなって怪我や事故につながりやすくなるといったデメリットがあります。
そのため、動物愛護の面からみて、断耳や断尾はするべきでないという意見が世界的にも主流になりつつあり、ヨーロッパの一部では法律で禁止されているようです。

必要な手術なのかどうか

このように昔とは違い、断耳や断尾は犬のためではなく、人間の都合で行われている場合がほとんどです。外科手術を行わなくとも本来の姿は好まれるべきものでしょう。その上で、本当に手術が必要なのかどうか、今一度、犬に関わる全ての人が考えるべきかもしれません。