歴史上には様々な偉人が登場しますが、そのなかでも犬好きとして有名な人物もたくさんいます。人間に接するように愛犬たちと暮らしていた彼らのエピソードを知ると、犬が好きな人は興味深く感じるものですよね。
ここでは、将軍や女王、独裁者といったさまざまな有名人の犬好きエピソードをご紹介します。

愛犬を溺愛するあまり愛人も嫉妬した?アドルフ・ヒトラーとブロンディ

まずは独裁者としてとても有名なヒトラーの犬好きエピソードです。
ベジタリアンで禁酒・禁煙家、人々の健康を重んじ、女性にも紳士的にふるまった。そんなヒトラーですが、やはりユダヤ人への大迫害で悪名高い人物ですよね。他にも、自分の意に沿わない人物を排除するなどしたとても怖い独裁者です。

そんな彼ですが、生涯にわたり犬を愛してきたというエピソードもかなり知られています。
ヒトラーの飼った犬は何頭もいて、それぞれ記録もあるようですが、一番有名なのは、やはり最後に飼っていたメスのジャーマンシェパードのブロンディでしょう。

ブロンディは7歳の頃にヒトラーに贈られました。
ヒトラーは彼女を愛し、誰が好きかと訊ねられるとブロンディと答えるくらいだったそうです。そのためか、ヒトラーの愛人であり後に正式な妻となったエヴァ・ブラウンは、ブロンディに嫉妬していたようで嫌っていたというエピソードが残っているそうです。

ブロンディは同じジャーマンシェパードとの間に5匹の子犬をもうけました。そのうちの1匹にヒトラーはヴォルフという名前を付けて可愛がっていたそうですが、第二次世界大戦の末期である1945年4月29日にヒトラーが自殺のために用いる青酸カリの効力を試すために毒殺されてしまったそうです。ヴォルフ以外の幼い四頭の子犬も殺され、その翌日にヒトラーは自決しました。

世界に犬種を流行らせた?ヴィクトリア女王とポメラニアン

イギリスのロイヤルファミリーは犬好きが多いことで有名だそうですが、その中でもヴィクトリア女王の犬好きエピソードはとても有名です。現在でも人気犬種として安定しているポメラニアンを流行らせたのがなんとヴィクトリア女王だと言われているのです。

ヴィクトリア女王はポメラニアンを気に入り、質の高い系統をヨーロッパ中に普及させ、ポメラニアンの繁殖のための犬舎まで作らせたと言われています。ヨーロッパ各地からさまざまなポメラニアンを輸入し、改良と人気の高まりのきっかけとなったそうです。

また、ヴィクトリア女王は若き日にトイスパニエルのダッシュという愛犬を可愛がっていました。
しかし、戴冠からさほど経たない1840年にダッシュは9歳で亡くなってしまいます。愛犬の死を悲しんだヴィクトリア女王は庭園に墓地をつくり、埋葬したそうです。
墓碑に刻まれた銘を読めば、女王がいかにダッシュを愛していたかが伝わってきます。

生類憐みの令で有名な犬公方!徳川綱吉と狆

生類憐みの令で有名な徳川綱吉ですが、飢饉の際に害獣を駆除することすら禁じられたことで民衆からは恨まれたそうです。
その一方で、生きとし生けるすべての者が慈しまれれうような道徳心を広めたともいわれています。現代におけるあらゆる福祉の基礎となっており、肉食から米食が尊ばれるようになったことで、水産業の発展にもつながったそうです。

もともと日本には犬食の文化がありました。
問題となったのは、かぶき者と呼ばれる現在でいうところのヤンキーのような人々が、権力への反抗のために武士の飼い犬を勝手に殺して食べてしまうという事件が起こることでした。
こうしたモラルの低下に幕府が頭を悩ませた結果、犬愛護令とそれに違反した場合の厳罰についてお触れが出たそうです。

生類憐みの令で多くの人が思い出す犬種が狆なのではないでしょうか。
江戸城内では狆が100匹も飼われていたといわれています。また、狆のための医師も手配していたといわれ、これが日本での獣医の始まりだともいわれています。
犬を登録制にし、野良犬を保護する施設を作り、犬食文化を禁止にしたという彼の功績は、現在の日本人の暮らしにも大きく影響していますね。

愛犬と一緒にウナギを食べていた?西郷隆盛の犬好きエピソード

西郷隆盛といえば、上野の銅像が有名ですよね。愛犬を連れていることから分かるように、西郷隆盛もまた犬を愛している人物の一人でした。
ダイエットしなければ長生きできないと医者に言われた西郷隆盛は、自然が豊かだった東京の山を愛犬であったメスの薩摩犬ツンと一緒に登り、兎狩りを趣味としていたそうです。
上野で共に歩いている愛犬はこのツンをイメージしています。ただし、銅像が作られたときはすでにツンは亡くなっていたので、銅像のモデルは薩摩犬のオスとなっているようです。

また、祇園の料亭には寅という名前の愛犬を連れて行ったというエピソードもあります。
木戸孝允や伊藤博文が若い芸者と遊ぶ中、西郷隆盛だけは昼間に祇園にやってきて、寅と一緒にウナギを食べさせてすぐに帰ってしまったという逸話も残っています。
他にも、西郷隆盛と愛犬たちのエピソードはたくさん残っているようです。

そして明治10年、西郷隆盛は西南戦争にも愛犬を連れていきました。しかし、追い詰められた西郷隆盛は城山の地で自害。その前に、連れていた愛犬の首輪を外し、逃がしてやったそうです。ここからも犬への愛情深さがうかがえますね。

犬好きだった偉人は他にもたくさん

犬好きだったという世界の偉人たちはまだまだたくさんいます。
ペキニーズを愛し、王朝からの持ち出しを禁じたという西太后も有名ですよね。また犬好きが高じて今でいうセラピードッグのようなことをしていたという精神科医のフロイトは、ナチスに迫害され亡命するという時にもチャウチャウのリュンと共に逃げたそうです。

また聖徳太子も犬好きだったそうで、愛犬の雪丸は話せるしお経も読めるのだと聖徳太子は言い張っていたそうです。可愛くて仕方なかったのでしょうね。
聖徳太子の遺言により、雪丸は死後、達磨時に葬られ、今でもその銅像が残されています。現在ではゆるキャラとして復活しているようですよ。

このように、人間の歴史はとくに犬とのさまざまなエピソードが残されていることがあります。犬好きという切り口から歴史上の人物について注目してみることも、なかなか面白いものですよ。