犬の問題行動のひとつに「マウンティング」があります。
文字通り、「馬乗り(マウント)」することです。
さらに詳しく言うと、人の足や手、他の犬、時にはクッションなどに覆いかぶさり、腰を振ります。
中には、家にお客さんが来るたびに愛犬がマウンティングをするので困っている飼い主さんも。
犬がマウンティングをする理由や、やめさせるためのしつけ方などをご説明します。

犬がマウンティングするのにはいくつかの理由があります

マウンティングの理由は大きく分けて三つのものが考えられます。
ひとつ目は「性的な本能」です。
発情期のメス犬が発するフェロモン物質を嗅ぎつけるとオス犬は興奮しマウンティング行動を始めます。
子孫を残すための性的・本能的な行為です。
「マウンティング」と聞いて多くの人が思い描くのもこのイメージではないでしょうか。

ふたつ目の理由は「社会性を学ぶ」というものです。
子犬同士がじゃれあっているところを見ていると、上になったり下になったりして「馬乗り」をし合っています。
子犬たちはマウンティングでまさに「上下」の関係をつけることで、無駄なケンカを避ける社会性を身に着けるのです。

三番目の理由は、「遊び」です。
飼い主さんに大興奮で飛び掛かったらそれがマウンティングになってしまい
それが楽しくて習慣になったようなケースが考えられます。
ぬいぐるみやクッションにマウンティングするのも、その子なりに楽しい「遊び」なのかもしれません。

女の子(メス)もマウンティングってするの?

このようにマウンティングは一般的なイメージと違って、性的な理由からだけ起こるものではありません。
ということはつまり、女の子でもマウンティングをする場合が考えられるということです。群れをつくり、リーダーに従って生きてきたのですから、犬は上下関係を強く意識する動物。
たとえ女の子であっても、自分が相手より優位であることを主張したいと思うような気の強い子ですと、その性格がマウンティングという行動につながる場合があります。
マウンティングをすること自体は病的なことではないので、その点については心配しなくて大丈夫ですよ。

人にまでマウンティングするのはどうして?

今お話ししたように、男の子であれ女の子であれ、マウンティング自体は異常な行動ではありません。
でも、人、特に飼い主に対してマウンティングする時には注意が必要。
犬が人にマウンティングをする場合、自己アピールや支配欲などが根底にあると考えられるからです。
つまり、その時犬は飼い主よりも自分の方が立場が上だと主張している可能性があるのです。
そのまま放置しておくと、ゆくゆくは思い通りにいかないといっては吠えたり、時には自己主張のために噛みついたりするような犬になってしまうかもしれません。

マウンティングをしつけでやめさせることは可能なのか

マウンティングをしつけでやめさせようと思ったら、まず愛犬の様子をよく見るようにしてください。
もし愛犬が興奮状態や喜びの気持ちの表現として、「遊び」のようにマウンティングをしているのであれば無視をするのが一番良いしつけの方法になります。
この時、大きな声を出して叱るのは逆効果です。
犬は「一緒に吠えてくれた」「構ってもらえた」と勘違いするでしょう。
そうすると「マウンティングをすれば遊んでもらえる」と悪い習慣を覚えてしまいます。
犬があなたにマウンティングをしようとしたら、注意を与えて犬を引き離し、少しの間無視するのです。
飼い主さんからの反応が得られなければ、マウンティングをしても遊んでもらえないことを学習するはずです。

より難しいのは犬が「自分の方が上だ」と主張するためにマウンティングをしている時です。
このような場合犬はすでに飼い主さんを下に見ているのですから、しつけのためには主従関係の構築を最初からやり直すことが必要になります。
犬と人間にとって理想的な関係とは、なれ合いの対等関係ではなく、人間が主人で犬がそれに従う関係です。
犬が自己アピールのためにマウンティングをしてきたら、毅然として叱る厳しさをもってくださいね。