かわいい愛犬だけど、無駄吠えや噛み癖が直らなくて困る……
そんな飼い主さんも中にはいることでしょう。
対策のひとつとして用いられることがある道具が「口輪」です。
文字通り、犬の口にはめて物理的に吠えたり噛んだりできなくさせる道具です。
でも、ちょっと待って!
間違った口輪の使用方法はしつけにならないばかりか、愛犬に強いストレスを与えかねません。
今回は口輪の正しい使用方法をご紹介します。
口輪は飼い主への不信感に繋がりやすい
無駄吠えや噛み癖があるのは問題です。近所迷惑にもなりますし、他人や他の犬を傷つける可能性もあります。
しかし、犬はそれが「悪いこと」だと分かった上で、飼い主を困らせようとわざとやっているわけではないのです。
ですから、犬たちには口輪をされる理由を理解することはできません。
たしかに、口輪をはめればその瞬間だけは噛んだり吠えたりする行動は止まるでしょう。
しかし飼い主さんが根本的な問題に向き合わず、「楽だから」「手っ取り早いから」と安易に口輪を多用すれば、犬は「いやなことをされた」という思いを募らせ飼い主に対して不信感を抱くようになってしまうかもしれません。
口輪は犬にとって大きなストレスになる
私たち人間だって、強制的に口をふさがれたら嫌な気持ちがするのは当然です。
同じように、犬にとって口輪をはめられた状態は快適なものではありません。
まして、犬は口を開けて「ハッハッ」と呼吸することで体温を調節する生き物。
自由に口を開くことができない状況が、犬にとって大きなストレスになることは否定できません。
口輪をしていれば水を飲むこともできませんので、特に暑い時期には注意が必要です。時々、「どのくらいの時間なら口輪をしていても大丈夫か?」という質問も見かけます。
ですが、時間の短い・長いに関係なく、犬にとって口輪は基本的にストレスであることを理解しましょう。
しつけで口輪を使うのはおすすめできない
実は、口輪は「しつけのための道具」ではないのです。
日頃きちんとしつけのできている犬でも、とても怖い思いをしたりビックリしたりした時にとっさに噛んでしまうことは考えられます。
例えば動物病院での診察時などがその良い例です。
ただでさえ病気やケガで緊張状態にある犬が、恐怖から獣医師の手に噛みついてしまうことがあるかもしれません。
医師にとっても危険ですし、診察の妨げにもなりますね。
そうした際の一時的な対処としては、口輪をはめることも有効な手段でしょう。
また、老化などで認知症の症状が見られる場合や、「噛み癖」を直すようにしつけている途中段階であれば散歩の時に出会った他の犬に突然噛みつく危険を回避するためにやはり一時的に口輪をはめることが必要な場合もあるでしょう。
いずれにせよ、口輪は他人や他の犬に危険が及ばないように「一時的」に用いるものです。
言葉を話すことのできない犬にとって、「噛むこと」や「吠えること」は自然な感情表現のひとつ。
口輪でそれを押さえつけてしまうのではなく、「なぜ噛むのか」「なぜ吠えるのか」をきちんと理解して、正しいしつけを行うことが大切なのです。
正しい口輪の使用方法
このように、一時的な処置として用いるのが口輪の正しい使用方法です。
そして正しく使うのであれば、他人や他犬のためだけでなく、たとえばトリミングの際に暴れて怪我を負うようなアクシデントから愛犬を守ることもできます。
とはいえ、犬にとって口輪をはめることは強い抵抗感をともなうもの。
いざという時に正しく口輪を使用することができるように日頃から口輪のにおいをかがせておいたり、口輪の中におやつを入れて食べさせる、といった方法で口輪に慣らしておいてあげましょう。
何よりも大事なのは、飼い犬と信頼関係を築くことです。
飼い主さんが犬のことを真剣に考え、周囲への配慮を怠らないことで犬も人間も快適に暮らすことができます。
そのためにも口輪を不用意に用いることは避け、本当に必要な時にだけ、正しく使うように心がけたいですね。